« 依田真宣&須関裕子 (2017/6/9) | トップページ | 橋森ゆう希、鍵富弦太郎、河野紘子 (2017/7/10) »

新国立劇場 楽劇「ジークフリート」 (2017/6/17)

このワーグナーシリーズが始まって以来、日本で高度なワーグナー演奏が聴けることが当たり前みたいな感覚になっているが、おそらく、これは嬉しい誤解なのであろう。

今回は、まずはヴォータンの声である。
姿を見ずとも、声だけでその役と判ると、鑑賞がとても楽になる。
それだけでも、このキャスティングは素晴らしい。

そして、極めつけは、第三幕の演出であろう。
ブルンヒュリデの目覚めの場面は、歌唱なしの動きの少ない演技なのに、目は舞台に釘付けになってしまった。
そして、終わってみれば、この公演の印象は、ほとんどブルンヒュリデ一色である。
美味しいところを全部さらって行く、とはこのことだろう。
それくらい、第三幕は、見せ方の上手さを堪能させられた。

この楽劇は、「指輪」四部作の中では、単独で上演されることはまずないし、物語の進行上は、つなぎの要素が大きいため、幕毎に、場面が大きく変わり、話も着々と進んでゆく。
音楽的にも、管弦楽曲集では、採り上げられるのは「森の音楽」くらいで地味な演目の印象があるが、実際に聴いてみると、内容満点である。

同行者は、作品の長大さから考えて、管弦楽のリハーサル回数は限られているはずなのに、演奏の完成度が高いばかりでなく、オーケストラの演奏から、随所に、音楽に対する深い共感が感じ取れたことに感じ入っていたが、確かにそうである。
チェロパートからは、ゆったりとしたビブラートが完璧に同期しているのが聴こえたし、小鳥たちに話しかけようと主人公が製作した葦笛のお粗末な音色を、ファゴットが見事に表現していたところも、公演全体の中での見せ場になっていた。
こんな引き出しを用意していたファゴット奏者は、いったい誰なのであろうか。

また、この作品では、チューバのソロが多用されている。
チューバ奏者にとっては、滅多にない檜舞台であろうが、ソロとしての出番が限られているだけに、大変だったはずであるが、指揮者の意図が確かに音になっている、と感じさせる響きで一貫していた。

帰りの電車の中で、同行者は、小鳥役の配役を確認していた。
覗いてみると、日本人キャストのオペラであれば、タイトルロールを張れる実力者ばかりである。
とびきり上等な休日の午後を過ごした満足感があったが、この贅沢な配役を見れば、納得である。

楽劇「ジークフリート」
2017年6月17日(土)14時 新国立劇場
演出  ゲッツ・フリードリヒ
飯守泰次郎指揮 東京交響楽団
ジークフリート   ステファン・グールド
ミーメ        アンドレアス・コンラッド
さすらい人     グリア・グリムスレイ
アルベリヒ     トーマス・ガゼリ
ファフナー     クリスティアン・ヒュープナー
エルダ       クリスタ・マイヤー
ブリュンヒルデ リカルダ・メルベート
森の小鳥    鵜木絵里 九嶋香奈枝 安井陽子 吉原圭子
          奥田花純

« 依田真宣&須関裕子 (2017/6/9) | トップページ | 橋森ゆう希、鍵富弦太郎、河野紘子 (2017/7/10) »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 依田真宣&須関裕子 (2017/6/9) | トップページ | 橋森ゆう希、鍵富弦太郎、河野紘子 (2017/7/10) »