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修士リサイタル@藝大 (2017/3/14)

音大の大学院生による無料コンサート。

「修士リサイタル」と題されているが、客席の最後列は「教職員席」となっており、演奏後は、先生とおぼしき人たちが集まって、難しい顔で話をしているので、きっと試験も兼ねているのであろう。

客席は階段状になっていて、舞台はなく、床にピアノが置かれている。

まずは、バイオリン奏者によるバッハ無伴奏。

無伴奏で弾いて貰えると、ホールの音響特性が良く判る。

一見すると、角材が露出していたりして、視覚的には無骨な印象もあるホールだが、ほぼ全面木張りであるだけのことはあり、トッパンホールの響きをさらに柔らかくしたような、人を優しく包み込む響きで、無伴奏の演奏が聴き易い。

ソナタ3番の1曲目は、なかなか音楽になり難いこの曲を音楽的に演奏している。
そして、バッハの深みも備えている。
完成度の高いバッハ演奏だと思う。

次のフーガは、おそらく、無伴奏の中の最難曲であろう。

この曲を聴いていると、「アルプス交響曲」以上に、演奏者の前に立ちはだかる巨峰を登っている気分になる。

次々と難所が襲ってくるので、1曲目を、あれほどの完成度で弾いた奏者も、次第に、一杯一杯な感じになって来る。

しかし、こうした演奏の方が、この曲の難度の高さが感じられて、音楽に対する理解が深まる。

このアルプス登山の後に、まだ2曲残っている、というのは、あんまりな構成である。

3曲目は、シンプルであるがゆえに、正確さが求められるし、終曲には切れ味が求められる。

トライアスロンともまた違い、登山競技の次は、茶の湯審査で、その次は知能テスト、みたいな配列である。

これを弾き切った上でバイオリンソナタ、というところはトライアスロン風であるが、ここはスポーツ競技ではなく、芸術表現の場である。

やはり、第一楽章では、前曲での消耗が感じられる。

この演奏家の持ち味が最も出ていたのは第三楽章だったろう。
これを聴いて、なるほど、こういう音楽性の持ち主なのか、という感じがした。

なんだか、久しぶりに、バイオリンを、堪能して聴いた気分になった。

後半は、ビオラ奏者が登場。

前半と、風景が一変してしまうところが面白い。

楽器が気持ち良さそう歌っている。

音楽は、何よりも、まず快楽であることを思い出させてくれる演奏である。

ビオラであるから、テクニックを誇示するような場面はないのだが、音色と強弱の使い分けが巧みで、聴いていて楽しい。

全く知らない曲を、聴衆に楽しく聴かせる技術というのは、ことによると、演奏家にとって、一番大事な技術かも知れず、この演奏家は、それを持っているのかも知れない。

2曲目は、プロコフィエフ。

聴き慣れた「ロミオとジュリエット」のはずが、冒頭のメロディーが、まるで物語を語り始めているような口調に聴こえる。

奏者の心の中に物語がなかったら、こんな風に聴こえる演奏にはならないだろうが、シェイクスピアの台本を読めば、こういう演奏ができるとも思えない。

原作に対する作曲家のまなざしを感じているのだろうか。

聴き慣れた旋律なのに、今まで、こんな感じを受けたことはなかった。

だが、これが、この旋律に対する正解であるように思われた。

修士リサイタル
2017年3月14日(火)19時 東京藝術大学 第6ホール

葉石真衣(バイオリン) 日下知奈(ピアノ)
バッハ  無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005
グリーグ ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第2番 ト長調 作品13

渡部咲耶(ビオラ) 秋元孝介(ピアノ)
マレ        5つの古いフランス舞曲
プロコフィエフ バレエ「ロメオとジュリエット」より

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